秋の夜の話

 秋の夜は好きだろうか。僕は好きだが、時折なんとも言えない感情に苛まれることがある。と言うのも、ちょうどこの時期は中学・高校時代所属していた水泳部の陸トレの時期などと重なるからである。

 

 思えばあの頃が一番楽しかったのかもしれない。もちろん色々とゴタゴタがあったりはしたが、夕暮れの中友人達と駄菓子屋にちょっと寄り道して帰っていた時は塾や考査の事以外は何も考えずに済んだ(これはもしかしたら僕が能天気だっただけかもしれないが)。ゲームの話だったり教師の悪口だったり……そんな話ばかりしていた。

 大学に受かって上京してから秋の夜を歩くのは、五、六限からの帰りとバイトに行く時、そして買い物に行く時くらいである。大学からの帰りはまだしも、バイトや買い物に行く時に友人がついてくるなんて事はない。たった一人で目的地へ向かう。そんな時ふと風が吹くとたまにその頃のことを思い出して今の自分と比べてしまう。今の僕は就活のESをどう書こうか、履修はどうしようか……そんな事ばかり考えている。ある意味充実はしているが、そこに楽しさは全く無い。

 あの頃の僕が今の僕を見たらなんて言うのだろうか。「大学なんてそんなもんでしょ?」なんて調子に乗ったことを言うかもしれない。

 

 今の僕からすればあの頃の僕が羨ましくて仕方がない。