ESという名の小説

 インターンシップに参加する時も企業にエントリーする時も必ずESを書く必要がある。その長さや内容は企業によって様々だが、ほとんどの企業が必ずと言っていいほど聞いてくることがある。それが「学生時代に自分が力を入れたこと」、通称「ガクチカ」である。

 

 このガクチカというものは学生時代に特に何もしていないような僕にとっては苦痛でしかない。話すことが全く以ってないのである。アルバイトではバイトリーダーのような役職は存在せず、塾講師と和菓子店の店員を勤めるという何の面白みもない経歴。サークルは文化系サークルな上に茶会局長という名前だけ立派な役職。そしてボランティアや長期インターンシップに参加したわけでもない。

 おそらく僕が学生生活に力を入れたことについて忠実に記した場合、「私は朝ちゃんと起きて大学に登校できるよう頑張りました」になってしまう。もちろんこんなことを書いていたら落ちる。となると、自分がいかにすごい人物でどれほど活躍したかという一種の「英雄譚」を書かなければならない。例えば自分がアルバイトで中心的な人物となり、店長にも褒め称えられ皆の手本になった……と言った具合である。正直自分でこんなことを書くのは小っ恥ずかしい。でもこういうことを書かなければ受かることができないのだから仕方あるまい。

 つまらない学生生活を送って来た自分にも非があるのだが、皆が皆カンボジアミャンマーに小学校を建てたり、あるいはスターバックスで働いたりしているわけではないのだから……と、「小説」をつらつらと書きながら思うのである。