オンライン講義についての話

 Twitterのトレンドに「#私たちも大学に行きたい」というようなハッシュタグが上る事がある。

 そのハッシュタグを用いてなされる主張は大抵の場合こうだ。「小中高生が学校に通えているのに、なぜ私たちは通えないのか。」確かに、殆どの大学においては後期の講義についてもZoomなどを通じたオンライン講義、あるいはオンデマンドによる講義が予定されており、見方によれば、憲法23条に定める所の「学問の自由」の侵害と考える事ができるかもしれない。

 ただ、このある一種の「運動」については私はそこまで賛同できない。もちろん、「図書館などを活用させてくれ」という主張には同意できるし、そうすべきであると考える。しかし、これらの施設の利用については、許可が必要などの制約を除けば自由に理由できる状況となっている(少なくとも感染終息が見込めない東京都隷下の本学はそうだ)。

 仮にそれらの主張であれば、「学費を下げろ」という主張の方が的確ではなかろうか。いかなる大学であれ(放送大学等特殊大学は除く)施設使用料は支払っている。その分の控除を求めることは妥当であろう。

 しかし彼らが唱える主張はあくまでも「大学に通う」というもの。つまり、オンラインではなく対面式の講義を全面的に実施せよというものである。これは主張としてリスク等を考慮しない全くもって的外れなものであると考える。

 第一に、対面授業が再開した場合の人の往来の大幅な増加である。これについては「Go Toキャンペーンがあるじゃないか」というような批判があるかもしれない。ただ、当該キャンペーンはあくまで旅行や食事に関するものであり、基本的に「観光」を主眼に置いている。しかし、大学の場合は大学〜下宿間の往来が基本となり、この往来が感染拡大のリスクとなることは素人目に見てもわかることである。

 第二に、授業教室という密集空間である。多くの大学において、講義は大規模の人数を収容して行われる「大教室型」と、数人で行われる「ゼミ型」の二つに分類される。このうち後者は首都圏以外の各大学において学内での対面講義が復活しており、後期からは首都圏内各大学においても復活の動きがある。問題は前者である。大学に通ったことのある人(ここでは対面式の大教室型講義を受講したことがあるものを指す)ならばわかると思うが、必修科目の講義は数百人が一斉に同じ教室に集まって行われるため、三密のうちの「密集」および「密接」を満たすこととなる。この時点で実現可能性はほぼゼロに等しいが、仮にホールなどで講義を行うことによって「密集」・「密接」を解消できたとして、クラスターを完全に予防できるとは限らない。

 

 「じゃあ大学をどうやって楽しめばいいんだよ!」

 こうした意見はSNSで散見されるが、別に大学は楽しむ場ではない。あくまでも「勉強する場の一つ」であり、副次的な要素として友人と交流を深め、生活を楽しむというものがあるのである。もし大学に入って友人とタピオカミルクティーを飲みながら講義を受ける気満々でいたのであれば、その認識を改めた方がいいかもしれない。本来の大学とは自分の突き詰めたい学問を習得するためにあるのだから。