就活が好きになれない話

 僕は「就職活動」が好きではない。正直「就活めっちゃ好き!」と胸を張っていうことができる御仁は日本全国隈無く探せど数える程しかいないだろう。ムスッとした顔をした人事部の社員、よくわからない課題、隙あらばマウントを取ってこようとする就活生達。全てが嫌いだ。

 一応僕は公務員志望だが、採用数の減少にコロナ不況が追い討ちをかけているため、民間の内定なしでは流石に戦線に飛び込めない。そのため、致し方なくやっているというのも嫌いな理由の一つかも知れない。

 

 就活をする場合、3つの関門がある。

 第一に、説明会である。僕は「媚を売る」ということが得意ではない、というか嫌いである。だから例えば周りの人間が教授に講義が終わる度に質問をして評価を上げようとしているのを見ると不快になる(もちろんこの行為は処世術の一つとして賞賛されるべきであろうし、否定はしない)。そんなものだから、ウェビナー(ZOOMなどを通して行われるwebセミナーのこと)に参加している就活生達が「本日は貴重なお話ありがとうございます、御社の理念がよくわかりました。」みたいなコメントを送っているのを見ると、どうも嫌になる。仮に自分がその社員の立場であれば笑顔を保つことはできない気がする。

 第二に、インターンシップのES(エントリーシート)である。ESではどの企業も大抵「学生時代に力を入れたこと(ガクチカ)」やら「このインターンシップを通じて学びたいこと」を聞いてくる。しかし、僕は他の就活生のように「カンボジアに学校を建てた」こともなければ、「体育会系の部活で部長として優勝に導いた」というような経験もない。唯一あるのは「バイトで外国人観光客向けのPOP作成を頑張った」くらいなものである。そんな薄っぺらい学生生活であったから「貴意に沿うことができませんでした」というメールが来る。

 第三に、グループディスカッションである。これが一番辛い。前二つの関門をくぐり抜けてきたはいいものの、最後に待っているのがこれだと溜息を何回ついても足りない。前説明では「人事担当者が入室しますが採用には一切関係ないですので、リラックスしてディスカッションしてくださいね〜」と言われるが、嘘である。人事は事あるごとにペンを走らせるし、目が全く笑っていない。獣の目である。これで「採用に関係ない」なんてあり得るわけがない。そんな様だから、就活生も必死になって自己アピールする。とにかく喋ろうとするし、とりあえずディスカッションのリーダーになろうとする。そして、「僕はスタバで2年間勤務してて〜」や「こういうカンファレンスはASAPでやらないとタイムリミットをオーバーしちゃうよ」みたいなアピールになっているのかいないのかわからないことを口走る者もいる。そんな中で自分を前面に押し出さないといけないのだ。地獄である。

 

 でも、この関門を突破しなければ内定がもらえないので僕は自分の性格を捻じ曲げて「善良なる就活生」を演じる。説明会では脳死ウンウン男になるし、ESでは体育会部活動の部長になっている。そしてグルディスでは周りを蹴落としてグループリーダーを務める。

 

 いまだに内々定は来ない。